カーボンブラック carbon black

カーボンブラックは、ゴムの補強性充てん剤、導電性付与剤として使用されますが、20世紀の初めにゴムの補強剤として発見されて以来、今日までカーボンブラックに匹敵、あるいは超える補強剤はまだ発見されておらず、ゴム製品といえば黒をイメージするほど、ゴム産業の発展を支える最も重要な材料です。

カーボンブラックは、ガスやオイルを熱分解(サーマル法)、あるいは不完全燃焼(ファーネス法、コンタクト法)して得られる微粉末(微細な球状粒子の集合体)ですが、限りなく純粋に近い炭素材料で、石炭や木材を燃焼させて発生する単純な炭素(すす)とは異なる物質です。現在、ゴム用のカーボンブラックのほとんどはオイルファーネス法によって生産されています。90%以上の炭素と、残りの水素と酸素は官能基として存在しており、炭素粒子の表面と官能基がゴムのポリマー鎖と結合したり、物理的な相互作用によって架橋(加硫)ゴムの物性を大幅に向上させます。カーボンブラックの配合量を増加させると、ゴムの硬度が上がるだけでなく、耐摩耗性、引張り強さ、引き裂き強さなども増加します。
これら補強性や導電性などの機能を発揮させるための重要な因子は、カーボンブラックの大きさ(粒子径、比表面積)、粒子の形(ストラクチャー)、粒子の表面の化学的特性(水素含有量、酸素含有量)があげられます。これらの違いによって様々な種類のカーボンブラックがあります。


関連用語
compounding ingredient:配合剤
filler:充てん剤、フィラー
coupling agent:カップリング剤
white carbon:ホワイトカーボン
 →シリカ(二酸化ケイ素、無水ケイ酸)の微粉末でカーボンブラックに対して呼ばれる。
reinforcing filler:補強性充てん剤
non-reinforcing filler:非補強性充てん剤
carbon black structure:カーボンブラックストラクチャー
agregate:一次凝集体、一次ストラクチャー、アグリゲート
 →カーボンブラックの最少粒子単位。微球状の基本粒子同士が融着し、連鎖状や不規則な鎖状に枝分かれした複雑な凝集形態を示す。
agglomerate:二次凝集体、二次ストラクチャー、アグロメレート
 →アグリゲート(一次ストラクチャー)同士が、ファンデルワールス力や単なる集合、付着、絡み合いなどで形成された凝集体
aggregation,agglomeration:凝集
aggregate,agglomerate:凝集塊、凝集体
 →カーボンブラックには基本粒子同士が相互に融着したアグリゲート(一次凝集体)と、そのアグリゲート(一次凝集体)同士がより弱く凝集したアグロメレート(二次凝集体)がある。
dispersion of carbon black:カーボン分散
 →ゴム中におけるカーボンブラックの分散状態。偏りなく分散し凝集塊がなくアグリゲートまで分散させたものが良い分散状態とされている。
thermal black:サーマルブラック
 →天然ガス、コークス炉ガスを熱分解して得られるカーボンブラック。
acetylene black:アセチレンブラック、ACET
 →アセチレンガスを熱分解して得られるカーボンブラック。電気伝導性がよい。
contact black:コンタクトブラック
 →ガスの炎を金属面に接触させて付着したカーボンを掻き取って得られるカーボンブラックの総称。チャンネルブラックなど。
channel black:チャンネルブラック
 →チャンネル鋼の背面に炎を当てて付着したカーボンを掻き取って得られるカーボンブラック。コンタクトブラックの一つ。
furnace black:ファーネスブラック
 →炉の中に炭化水素を噴射し不完全燃焼させて得られるカーボンブラック。天然ガスを使う場合をガスファーネスブラックと呼び、オイルを使う場合と天然ガスとオイルを併用する場合をオイルファーネスブラックと呼ぶ。
conductive carbon black:導電性カーボンブラック
 →ゴムに配合した時に優れた導電性をもつカーボンブラック。導電性は、カーボンブラックの比表面積を大きくする。配合量を増加すると導電性も高くなるが、ある一定量を超えるとそれほど変わらない。アセチレンブラック
conductive furnace black:導電性ファーネスブラック
 →ファーネス法によって得られた導電性の高いカーボンブラック
conductive rubber:導電性ゴム
lamp black:ランプブラック